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院内感染の原因の一つとも言える「空気感染」。エアコンからの気流に不快感を感じる患者さんもいる。患者さんにとってより快適と感じることのできる冷暖房設備は完備できないだろうか。
介護老人保健施設「樹の丘」
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ソリューション
放射式壁冷暖房は、開発当時伊藤喜三郎建築研究所にて設計を担当されていた金谷直政さん(現 かなや設計代表)と大成建設にて共同開発しました(共同特許取得済)。
プレキャストコンクリート版に架橋ポリエチレン管を配管し、管内に冷水・温水送水することで、壁全体が冷えたり温まったりするシステムです。
- 冷房時の結露対策が開発上の課題でしたが、独自の技術の組み合わせによりそれを解決しました。
- 同じ室内でも個別に冷暖房が可能で、コンクリート版なので、耐久性・耐火性にも優れています。
- 壁と冷暖房設備を一体にすることで設置コストを下げ、工場であらかじめ壁を作るので工事期間も短縮できます。
PC版建込み(吊上げ金物取付)
PC版建込み(吊上げ)
PC版建込み(取付位置確認)
PC版建込み(レベル調整ボルト取付)
PC版建込み(完了)
- この「放射式壁冷暖房」は、熱源からの送水温度が冷房時20℃(エアコンは7℃)、暖房時29℃(エアコンは50℃)と、実際の環境に近い温度での運転が可能です。従って、エネルギー消費・ランニングコストが抑えられ、環境への負荷低減を図ることができます。
開発者より
かなや設計
代表 金谷 直政(大成建設との特許取得者)
放射式壁冷暖房は「暖房は日向ぼっこの暖かさ」で「冷房は森林の涼しさ」という快適空間を提供できる設備です。大成建設の担当者と技術研究を重ね、病人や高齢者などの弱者の方に快適さと安全を提供する「空気のユニバーサルデザイン」を実現できました。マンションをはじめ、ホテルなど30m2程度の空間には最適かと思います。また常に乾燥を気にされる声の仕事や体調管理に気を使うスポーツ選手などにもお薦めです。
大成建設担当者より
技術センター 齋藤 正文
放射式壁冷暖房の開発では机上面でのシステム検討の後、実大の壁模型を製作し実際に使われる環境を想定して試験を行いました。送水温度と壁表面温度や冷暖房処理熱量の関係を調べたり、冷房運転時の結露発生状況を調べ、最適な運転方法を求めました。
特に、結露に関しては、ベッドや家具が置かれた状態なども想定して、結露が発生しないような対策を検討しました。エアコンからの風は時として、冷房では冷えを、暖房ではのぼせた感覚をもたらします。放射を使った冷暖房はこのような不快感を除いてくれます。
建築営業本部 藤川 晃良
放射式壁冷暖房の提案をした当初、お客様は不安だったようです。医療福祉施設の設計と営業に携わってきた私が自信をもって「高齢者には最適である」とプレゼンテーションできたことで、お客様にご納得いただき導入に至りました。
完成後「人間にとってやさしい冷暖房システムですね」とのお言葉をいただき、お客様から喜ばれて本当に良かったと思っています。
工事概要
発注者 |
川崎医療生活協同組合 |
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設計者 |
伊藤喜三郎建築研究所(担当:現かなや設計代表 金谷直政) |
所在地 |
神奈川県川崎市 |
竣工 |
2001年9月 |
延床面積 |
2,832m2 |
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