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五重塔の建立には最先端の技術が活かされています。 Vol.021 身延山久遠寺

質問:奈良の法隆寺、京都の教王護国寺(東寺)、山口の瑠璃光寺に共通してある国宝の建築物は何でしょう・・・・

正解:五重塔です。

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日本全国に国宝、重要文化財指定のものを含め40塔ほどの五重塔が現存しています。
五重塔という荘厳なたたずまいは、見上げる人々に静かな感動を与えます。現在(2007年11月時点)、大成建設は日本国内の三ヶ所で五重塔の建立を進めています。

  • 身延山久遠寺 山梨県 39m
    (2008年10月竣工予定)
  • 飯沼観音 千葉県 32.78m
    (2008年12月竣工予定)
  • 仏生山法然寺 香川県 25m
    (2010年11月竣工予定)

五重塔は歴史上地震で倒壊した塔が無く、大成建設では以前よりその技術を解明する実験や研究を進めてきました。
1997年、新築木造五重塔(富山県氷見市)の構造計画に携わり日本で初めて木造五重塔の構造解析・設計の大臣認定を取得しました。

また、2004年9月に起きました紀伊半島沖地震の際には、津市の津観音五重塔(木造高さ約21m)がどう揺れたのかという実測に成功し、伝統工法の強さや弱さを科学的に分析してきています。
過去から継承されている匠の技と現在の技術がいかに融合され、新たな五重塔が生まれようとしているのか、建立が進む身延山久遠寺へ行ってきました。

江戸初期に建立された五重塔
身延の景色

身延の景色

身延山久遠寺は甲府駅から約1時間、富士川が流れる山紫水明の地にあります。
今からおよそ730年の昔、日蓮大聖人が晩年を過ごされた霊山であり日蓮宗の総本山です。
古くから信仰の町として栄えてきた身延は「しだれ桜」の名所としても知られています。特に境内にある2本のしだれ桜は、樹令400年の巨木で、桜の季節には多くの参拝者で賑うそうです。

身延山に五重塔が建てられたのは、江戸時代の初期元和5年(1619年)にさかのぼります。しかし、文政12年(1829年)火災により五重塔を含め境内28棟が焼失してしまいます。
その後、万延元年(1860年)に五重塔が再建されましたが明治8年(1875年)全山を巻き込んだ大火によって再び焼失してしまったのです。

約130年ぶりに再建されることになった五重塔は、元和5年創建の「復元」の塔とし、材料・工法・意匠にわたって当時の姿を再現されようとしています。

匠の技を垣間見る
素屋根

素屋根

2007年11月下旬に現場へ伺った時は、ちょうど4層目(約18m地点)を建立中でした。
現場に足を踏み入れると檜の良い香りが漂い、鑿(のみ)や槌(つち)の音でしょうか、他の建築現場とは響いてくる音も違います。

素屋根に囲まれていますので高さは感じません。素屋根の床は五重塔の軒の高さに合わせて設置されており、足場もしっかりしています。
五重塔の層は上に行くほど少しずつ小さくなっていくため、初重ほど長い材料が必要であり、上に行くほど材料は短くなり足場が広くなります。

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部材は大阪の工場で加工され搬入されますが、気温や湿度によって微妙に変化する木のクセを読みながら、細微な調整を日々繰り返していくのだそうです。

心柱

心柱

五重塔内部には、心柱と呼ばれる1本の太い柱が存在しますが、建立後ではなかなか見ることの出来ない心柱も真近で見ることができます。

軒の曲線

軒の曲線

五重塔の軒は曲線を描いていますが、美しい軒の反りは木を繋ぎ合わせて丁寧にできています。繊細な仕事には感動を覚えずにはいられません。

五重塔建立は宮大工の方々の伝統的な匠の技に支えられているのです。

久遠寺五重塔を支える最新技術とは

大成建設の技術は五重塔のどんなところに活かされているのでしょうか?

久遠寺で復元される五重塔の建立場所は、過去に盛土された記録が残っており基礎強度が懸念材料とされてきました。
また谷からの吹き上げや、山から吹き下ろす風についても、一方向に負荷がかかることも心配されました。
このような不安材料を、大成建設の高度な技術が支えています。

【1】基礎をつくる
断面図

断面図(拡大)

高さ39mの壮大な木造建築物ですから、基礎がしっかりしていなければなりません。
18m下の頑丈な地層に到達するまで直径1.1mの杭を4本打ち込み、杭によって支持された土台を作ります。

【2】アンカー設置

山側の頑丈な地盤まで長さ26mのワイヤーを斜め45°の角度で埋め込む工事です。
2本のアンカーで五重塔の基礎をしっかり緊結することが目的です。

【3】マットスラブ施行

マットスラブとはコンクリート耐圧盤であり、五重塔の全ての重量を受ける土台です。
厚さ1.1m、一片14mの鉄筋コンクリート造です。

【4】石工事
石工事

石工事

五重塔には1本の心柱と16本の柱があり、各々の柱は「礎石」と呼ばれる大きな石の上に建てられます。使用される石は花崗岩自然石を使用し、山梨県旧白州町の大武川から採取されたものです。
自然の形状を残しながら柱を載せられるように、石表面の凹凸に合わせて柱の底面を加工して乗せます。

【5】素屋根工事
工事中素屋根

工事中素屋根

五重塔の組立を前に、作業が安全に効率よくできることや、組立中の建物を風雨から守ることを目的として作られるものです。
素屋根の高さは35.4mで、最上部にはクレーンが設置されており、一度に2tの木材を取り込むことができます。

【6】構造

画像 各層の中心には心柱が通りますが、梁が交差している状態です。
心柱は全長約38mあり、上部は檜を、中部、下部は身延山の杉といった3本の木を継いでつくります。

また5つある層は、それぞれの上に載せられている状態です。
この状態で揺れが生じると、上下の層で左右への反復運動が互い違いになり、更に上下で運動をうち消そうとします。
この技術は「組構造」であり、高度な建築技術なのです。

工事概要

名称

身延山久遠寺五重塔復元工事

建築主

身延山久遠寺

所在地

山梨県南巨摩郡身延山身延三五六七

工期

2006年1月15日〜2008年10月31日

URL

http://www.kuonji.jp/

身延観光案内

http://www.minobu.info/

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