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都市に森をつくる Vol.009 ノリタケの森

文化と出会い、森に憩う
蕪木 伸一氏

蕪木 伸一氏

青空の下に広がる、煉瓦の茶色と芝生や樹木の緑色。色合いのコントラストが美しく、都会の中の癒される空間「ノリタケの森」をご存知ですか?
『ノリタケ』といえば、2004年1月に創立100周年を迎えた言わずと知れた総合食器メーカーです。発祥の地でもある名古屋市則武町に2001年10月「ノリタケの森」をグランドオープンしました。

工場敷地内の生産施設の一部を取り壊し、道路沿いの長い万年塀を撤去し、その跡地に芝を張り、様々な草木を植え、誰でも利用できる広場・ミュージアム・レストラン・店舗のある「緑の空間」へ変貌しました。
自宅の近所に、こんな空間があればいいのにと思わせてくれる「ノリタケの森」、設計を担当し、登録ランドスケープアーキテクト(RLA)でもある蕪木 伸一(かぶらぎ しんいち)氏にお話を伺いました。

名古屋の都心に生まれた森

名古屋の都心に生まれた森

─「ノリタケの森」を設計するにあたりどのようにイメージを膨らませていったのでしょうか?
かつての工場煙突群をランドマーク

かつての工場煙突群を
ランドマーク

ノリタケの創業から100年の間に培った「企業文化」と、食器という「食文化」に深い関わりをもつものを、いかに「森」というイメージの中にちりばめていけるか、いかに「空間」としてまとめ上げていくかが課題でした。工業敷地内の様々な産業資産をデザイン要素として活用し、ノリタケの歴史性や固有性の高い空間を創出しようと考えました。

─敷地全体は古い煉瓦づくりの建物等があり歴史を感じますね。
ライトアップされた煙突群

ライトアップされた煙突群

歴史的建造物のみならず使用していた建物群を極力利用しながら、敷地全体をコンバージョン(用途変換)するという方針をとりました。
工場の解体で現れた、かつて45mの高さを誇った煙突群(計画時は約9m)をランドマークとして位置付け、昼の顔とともに夜のライトアップを行い、地域の記憶を再現しました。
解体工事中には、コンクリートの土間の下から古い煉瓦造の煙道が出てくるなど、遺跡の発掘現場のように、何が出てくるかわからないという驚きがありました。
その煙道の一部を丁寧に保存し、そこに至る大きなスロープやその上を渡るブリッジを設け、歴史的価値を表現しました。
スロープの擁壁には地下煙道の解体により発生したレンガを再利用し、選定・面取り、積み方の検討など十分に検討しそれらを積み上げることで仕上げを行いました。
役割を終えた産業施設・資源も歴史の一頁としてその意味を捉え直すことで、都市空間におけるポスト・インダストルアルなデザインを目指しました。

─来場者の動線という点で意識されたのは、どんなところでしょうか?

敷地中央に一列に並ぶ煙突群は、来場者にとってわかりやすいエントランスゲートとなっています。そこにロータリーとパーキングを隣接させています。
煙突ひろばと呼ばれる緩く起伏する緑の大地が敷地の北半分に位置し、南半分は文化・商業ゾーンになっています。既存の建物を再利用したレストランやショップと緑濃い開放的なパブリックスペースとの接点が、新旧のギャップを感じさせず全体がまとまるようにデザインしました。
来場者が、わかりやすく回遊できる空間構造を形成しています。

─ノリタケの森をオープンしてから、どんな変化があったでしょうか?

工場や雑居ビルが集積している地域の中で森を創造することで、地域イメージの向上に貢献できていると思います。周辺には緑が少ないにも関わらず、鳥や蝶・トンボなどが数多く集まるようになってきたことが竣工後の調査により確認されています。
また大規模地震が危惧される今、災害時には防災拠点としても位置付けられ、帰宅困難者など一万人程度を一時的に収容することも可能で、地域にとって心強い森になっているのではないでしょうか。

噴水ひろば

噴水ひろば

せせらぎ

せせらぎ

株式会社ノリタケの森 社長 片岡 英雄 様

株式会社ノリタケの森 社長 片岡 英雄 様

株式会社ノリタケの森
社長 片岡 英雄 様

ノリタケの森」は、当社(ノリタケカンパニーリミテド)の創立百周年の記念事業の一環として、本社の陶磁器工場跡に建設いたしました。当社は、1904年1月、『美しく白い精緻な陶磁器を日本で製造したい』という創業者たちの志を胸に、現在の名古屋市西区に「日本陶器合名会社」として創立されました。「ノリタケの森」は、百年前の先人達の熱き想いをよみがえらせ、この後の百年も伝え続けたいと願い、「森を育て、人を育てる」という精神のもとに創造したものです。

「ノリタケの森」には、毎年50万人もの方々が訪れ、都市の中の緑に触れていただいております。今年は特に愛知万博が開催されたこともあり、遠方からのお客様に多数お越しいただきました。

これからの企業は、社会とのつながりを抜きには存在しえない時代となりました。このノリタケの森は、産業観光の促進や環境への寄与、さらには地域社会への貢献と、当社が企業市民として、社会とのコミュニケーションを図る場として活用してまいります。

工事概要

発注者

株式会社ノリタケカンパニーリミテド

所在地

名古屋市西区則武新町3-1-36

設計期間

2000年10月〜2001年3月

施工期間

2001年4月〜9月

総敷地面積

110,313m2

受賞

第18回都市公園コンクール「社団法人公園緑地協会会長賞」
(施設・材料・工法部門)
第23回「緑の都市賞」国土交通大臣賞 グッドデザイン賞2003
第13回BELCA賞 ベストリフォーム部門受賞
第2回ecobuild(エコビルド)賞受賞
平成14年度名古屋市都市景観賞
第13回AACA賞入選

URL

https://www.noritake.co.jp/mori/

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