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バイオに潜む未知の可能性!地球をキレイにする使命を、これからも果たしていきます。

技術センター 土木技術研究所 水域・環境研究室 環境技術チーム
高畑 陽

分野

食品, 医薬品, ものづくり, 医療・福祉, データセンター

テーマ

環境・自然

世界で2例目の大発見となる、嫌気性ベンゼン分解菌「DN11株」。
今回は、今年7月にテレビ東京の報道番組「ワールドビジネスサテライト」でも採り上げられた新種のバイオ(微生物)、「DN11株」発見の功労者である高畑チームリーダーにお話を伺いました。

─話題沸騰中の「DN11株」とは、一体どのような微生物なのですか?
1μmのDN11株

1μmのDN11株

「DN11株」は嫌気性ベンゼン分解菌といって、酸素のない環境下(嫌気)で、ベンゼンを分解することができる特殊な微生物です。
これまでに見つかっているベンゼンを分解できる微生物は、酸素のある環境下(好気)でしかベンゼンを分解できませんでした。

これに対し、新しく発見された菌体は酸素がなくてもベンゼンを分解する能力を持つため、従来のベンゼンで汚染された土壌・地下水の微生物浄化技術で必要不可欠であった酸素(空気)の供給を行う必要がありません。

そのため、従来技術と比較して以下のメリットが期待できます。

  • 酸素供給に伴うコスト・エネルギーが不要となる(浄化コスト3割減)
  • 空気供給装置等が不要で騒音・振動が少なく、住宅地等の狭小エリアでの浄化が可能である
─「DN11株」は世界で2例目の大発見とのことですが、発見の経緯を教えて下さい。

DN11株はガソリン汚染サイトのベンゼン汚染地下水から発見されました。地下水1ml中に数百万匹存在している微生物の中から、100匹を超える微生物を単離(1匹だけの状態にする作業)してその性質を調べた結果、そのうちの11番目に単離した微生物にベンゼンを嫌気的に分解する性質があることを確認しました。

─確率を考えると、今回の「DN11株」の発見は奇跡に近いように思えます。
研究中!

研究中!

大変運が良かったとも言えますが、最新のDNA解析技術を用いて有用微生物を単離する確率を高めたことにより、目的とする微生物の発見に繋がりました。
これまでにない特殊な性質を持つ本細菌の単離は、新しい浄化方法を可能にする貴重な発見と言えます。

─ベンゼンで汚染された土壌や地下水の浄化の需要は以前からあったのでしょうか?

ベンゼンは発がん性を有しており、油類の中で唯一、土壌汚染対策法の規制対象物質に該当します。ベンゼンは比較的水溶性が高く、近年ではガソリンスタンドや工場などのベンゼン取扱施設における地下水汚染問題が深刻化しており、世間の関心の高まりとともにベンゼン浄化の需要は増える一方でした。

ベンゼンを含む大部分の油類、揮発性有機塩素化合物、シアン化合物などはバイオ(微生物)により分解されることが知られています。バイオ浄化技術はコストおよび環境負荷が小さく、理想的な浄化技術として考えられてきましたが、これまで微生物を有効に活用する浄化技術が存在していませんでした。
そこで、微生物の能力を最大限に活用して短期間で浄化を完了することが可能な原位置(非掘削)浄化技術である「注水バイオスパージング工法」を開発し、様々なサイトで適用しています。

注水バイオスパージング工法

注水バイオスパージング工法(拡大)

─微生物の研究に携わるようになったきっかけは何だったのですか?

もともと環境分野に興味があり、大学では土木工学科に所属し水の浄化について研究していました。入社3年目の時に海洋バイオテクノロジー研究所に出向し、そこで初めて微生物の研究に携わりました。バイオテクノロジーが注目されだした時代でもあり、微生物とその有効利用について研究していくうちに、次第に魅了されていきました。

─微生物の世界は、どのようなところが魅力的なのでしょう?

微生物が秘める未知で無限の可能性でしょうか。現在でも、世界に存在する微生物のうちその性質が明らかにされているものは0.1%にも満たないと考えられていますし、医学は進歩していても人間の腸内にいる微生物の約70%は解明されていません。微生物の世界と向き合えば合うほど、その知られざる可能性を探究したくなります。

─技術者としてのやり甲斐を感じるのはどのような時ですか?
DN11株について講演中(今年9月に開催された土壌地下水浄化技術展にて)

DN11株について講演中(今年9月に開催された
土壌地下水浄化技術展にて)

研究開発に携わっている以上、その成果をいかに実用化してお客様の役に立てるかということを考える必要があります。
研究や開発技術は実用化してこそ価値があり、実用化するまでのステップを踏んでいく努力が実った時の達成感はひとしおです。また、実用化した技術の課題や問題点から、それを解決していくための研究・技術を新たに構築して新しいビジネスに繋げていくことも重要であり、ひいては社会全体の活性化にも繋がっていくのではないかと思います。

─今後取り組みたいことはありますか?

建設業に限らず大きな視野で様々な分野の有用な技術を組み合わせて、環境をはじめ色々な課題に対し最適なソリューションを提供していきたいです。土壌・地下水汚染の浄化分野については「DN11株」の実用化を含め、更なる発展を目指します。有害物質で汚染された地球環境は次世代のためにも浄化していくことが必要不可欠と考えています。私のライフワークの一つとして、環境浄化に全力で取り組んでいきたいと考えています。

プロフィール

画像高畑 陽
技術センター 土木技術研究所 水域・環境研究室 環境技術チーム チームリーダー
1993年入社 博士(工学) 技術士(建設部門)

微生物を用いる環境浄化の研究・技術開発に従事し、土壌・地下水浄化事業の施工支援に携わっている。

主な実績

  • 2000年 土木学会技術開発賞を受賞
    国内で初めて、微生物を用いた石油汚染土壌の浄化事業に従事。
  • 2005年 土木学会環境賞を受賞
    国内最大規模のベンゼンを対象とした原位置バイオレメディエーション技術を開発・実施。
  • 2007年 水環境学会技術賞を受賞
    地下水を利用する地域で問題となっている硝酸性窒素汚染の問題に取り組んだ透過性浄化壁による生物学的脱窒技術を開発。

(コンテンツ作成日 2009年9月)

※本コンテンツに記載された情報(役職、数値、固有名詞等)は初掲載時のものであり、
閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

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