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根拠ある空間創りの追求。

設計本部建築計画グループ
岡田 哲

分野

医療・福祉

テーマ

空間創造, メディカル・ヘルスケア

最近の高齢者向け福祉施設においては、従来の大人数の画一的処遇を反省し、少人数のグループに分けた個別の処遇を試みるケースが見られます。

このことは、

  1. 利用者の人権の問題から療養環境の向上を目指す。
  2. 痴呆のような疾患に対しては少人数の処遇が治療に効果がある。

という二つの理由に基づくものです。

[1]は、利用者の要求及びサービスの多様化が図られる今日において、必然的に出てきたものと考えられます。

問題となるのは[2]です。ここでいう痴呆疾患の特性として、「15人程度までは認識できる」というものがあります。これは、この程度までの人数で生活している限り、痴呆疾患に特有の問題行動の減少が見られ、結果として落ち着いた生活と介護負担の軽減が実現されるというものです。この根拠に基づいて、少人数のグループのための空間が注目されているのです。

実際に、療養環境の向上のみに着目し、疾患に関係なく少人数のグループのための空間を計画するケースが見受けられます。ところが場合によっては、治療効果が期待できないばかりか、かえって看護・介護効率の低下につながることもあります。

つまり、療養環境的には一見向上しているように見えても、施設内での生活には問題を内在しているという結果になり、これでは福祉施設としては本末転倒といわざるを得えません。素晴らしいファサードの施設も大切ではありますが、医療福祉施設においては、建物(施設)が治療を補完する可能性があることを理解して、根拠ある空間を創造することが重要であり、それが実際の提案においても、私が常にベースとしている考えです。

最近EBM(Evidence Based Medicine)という言葉を耳にすることがあります。これは「科学的根拠に基づく医療」という意味ですが、このEBMをもじってEBA(A=Architecture)という造語をある医療福祉建築のセミナーで聞いたことがありますが、これはEBM同様、根拠ある建築物(施設)を造ることを意味しています。

そもそも医療福祉施設においては、患者や利用者の増加を狙うデザインも経営的な側面からは大切なことですが、まずは治療や現状の身体・精神機能の維持といった根本的な目的があり、その一助となる可能性を空間的に表現することが一番大切なことだと考えます。

発注先である介護事業者や社会福祉法人等からは、建物のデザインと併せてその事業性を問われることが増えている現在、「この空間は何故こうあるべきなのかの根拠を理解し、それをどうデザインに具現化するか」を明確に発注先に説明できることが重要であると共に、このような根拠ある空間創りによって、患者や利用者にとって満足度の高い 施設を創ることがわれわれ建築家の使命であると確信しています。

なお、福祉施設だけでなく療養系の医療施設にも波及させ、真に利用者のための医療福祉施設を増やしていくことが強く望まれます。現在の厳しい介護保険・医療保険の制度下では経営的に難しい面もありますが、事業性の検証や将来性を鑑みて発注者を支援していきたいと考えています。

プロフィール

画像岡田 哲
設計本部建築計画グループ 工学部建築学科卒 一級建築士

技術開発部に在籍当時、高齢者施設の住環境について、4年間にわたる実際の福祉施設での滞在実験など、医療・福祉施設づくりにおける「根拠ある空間創り」を目指して研究・実施に取り組んできた。

現在、設計本部計画グループにおいて、事業計画立案から施設づくり、そしてその検証まで行う医療・福祉分野のエキスパートである。現在、グループホーム等の高齢者施設、精神病院に注力して取り組んでおり、客先からの信頼も厚い。

共同著書:

  • 「建築空間のヒューマナイジング 環境心理による人間空間の創造」
    ( 日本建築学会編集 彰国社)

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