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生き物のスキマ 〜ニッチ〜

環境本部 環境保全グループ エンジニア
岡田 美穂

分野

その他

テーマ

環境・自然

「ニッチ」という言葉をご存知ですか?

「ニッチ(niche)」という言葉をご存知ですか?本来は、「(花瓶などを置くための)壁のくぼみ」という意味の言葉ですが、それが転じて、最近ではある用途に特化された商品や隙間産業を指してよく使われる言葉です。

実はニッチという言葉は、「生態的地位」という意味の生態学用語でもあります。生物もそれぞれがニッチを持っていて、場所や餌、活動時間帯など、あらゆる面から自分に合った隙間、つまり「棲み分け」を行っているのです。

生物を守り、保全しながら工事を進めるには?

私は、環境本部という部署で、環境保全の仕事をしています。例えば工事現場の中で希少な生物が生息していたとします。この生物を守り、保全しながら工事を進めるにはどうすれば良いか?それを考えるのが私の仕事です。

しかし相手は動物だったり、植物だったり、いろいろです。地域や環境が違えばまるで別の生物ばかりになってしまいます。その中で何に基づいて保全を進めていけば良いのか?私はニッチにその鍵があると思っています。

しかし生物のニッチと言ってもなかなかピンと来ないかもしれません。ここでは人に例えてニッチを説明してみたいと思います。
例えばデパートのバーゲン。休日のバーゲン会場に行くと、買い物に熱中する奥様と会場の隅のベンチで居心地悪そうなご主人、という場面を見かけることがあります。

これはバーゲン会場が奥様にとってニッチであり、ご主人にとってニッチではないからです。では何故ご主人のニッチではないのか?ご主人のニッチとは何か?何がそうさせるのか?空腹だから?暑いから?寒いから?理由はそんなに単純ではないかもしれません。

私は、生物に対して、同様の疑問を投げかけるようにしています。そして生物の分布や生活史などの生態を調査し、知ることによって、その生物のニッチに重要な要素を調べ、保全に反映させようと取り組んでいます。人間も他の動植物も基本は同じだと思います。

「ニッチ」を知るために

複雑な要素から成り立つ生物のニッチを知るためには、野外で直接観察するのが一番の早道です。もちろん、専門的な調査で得られたデータや文献から知る情報が重要なのですが、自分で現地や生物を観察することで、机上では判らないニッチというものが実体験でき、現場に迅速に反映させることができます。そういった訳で、あちこちの工事現場で虫取り網や双眼鏡を持った私が出没することとなります。

工事中に対応した現場は、竣工後もつい気になってしまいます。「あの鳥は今もいるだろうか・・・」などと考え、休日に見に行くときもあります。工事中であれば、周りは工事関係者ばかりですし、私もその一員として観察することが出来ます。しかし、竣工後となると、そうはいきません。

2年ほど前に対応した首都圏のあるベッドダウンでは、現場は駅前にありました。そこでは鳥の保護をしたのですが、いざ竣工後に見に行こうとすると、バードウォッチャーなどまるでいない市街地の駅前で双眼鏡を覗く、という非常に怪しい姿にならざるをえません。駅へ向かう人にじろじろと見られながら(こうなるともう双眼鏡から目を離して周りを見返す勇気がなくなる)、必死で鳥の姿を追います。そのような状況の中ですが、かつて保護した鳥の兄弟らしき幼ない鳥が、飛ぶタイミングを何度も何度も測った末に飛び立ったのを見たときは、「ヤッター!!」と思わずニコニコしてしまいました。その後ますます周りから冷たい視線を浴びたのは言うまでもありませんが・・・。

これからも、いろいろな場所で、いろいろな環境保全の仕事をしていくことと思いますが、観察から得た自分の感性を常に大切にして、工事の間だけでなく、工事の後もいろいろな生き物が自分のニッチを見いだせるような環境作りを目指していきたいと思います。そして、これからも不審尋問をされない程度に生き物のその後を見守りたいと思います。

プロフィール

画像岡田 美穂
環境本部 環境保全グループ エンジニア 1994年入社
技術士(建設(建設環境)) 畜産学研究科畜産環境学専攻修了

大学時代は信州で植物の環境調査に関わり、大学院時代は北海道でほ乳類(エゾナキウサギ)の生態調査を行っていた。
現在は主に工事区域内やその周辺に生息・生育する生物に対する対策立案等を行っている。
対象はトンボ、ホタル、鳥類、植物などさまざま。

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