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新宿御苑「母と子の森」 生きものが住みやすい環境づくりへ 新宿御苑「母と子の森」ビオトープ完成

2007年1月23日新宿御苑「母と子の森」がリニューアルオープンしました。新宿駅南口から徒歩約10分に位置する「新宿門」から入って右奥に広がる、約6ヘクタールの森が「母と子の森」です。
新宿御苑は明治時代後半から戦前にかけて皇室の庭園とされてきましたが、戦後は一般に開放され、現在は都心のオアシスとして環境省が管理しています。

今回ご紹介する「母と子の森」は、都会に住む子どもたちに自然とのふれあいを体験してもらうことを目的として1985年に作られました。自然観察のフィールドをリニューアル?どのような工事を行ったのでしょうか。完成まで1年以上現場担当をした大成建設の岡田美穂さんにお話を聞いてみました。

1月22日開催のオープニングイベントの様子

1月22日開催のオープニングイベントの様子

オープニングイベントで説明する岡田さん

オープニングイベントで説明する岡田さん

─御苑開園100周年記念事業としてリニューアルされたそうですが、具体的にどのようなフィールドを目指していたのでしょう。

画像リニューアル前の「母と子の森」は樹木が育ちすぎ、鬱蒼とした森となっていました。日の光が入らない森の中では、植物が育ちにくく、生息できる生物種も限られてしまうのです。

また、森の中では、使われなくなった子ども用プールがビオトープとして使われていましたが、自然な水辺のビオトープとしてさらに整備するには形状・構造ともに難しい状態でした。そこで、生きものが住みやすい環境に整えていくことが必要とされ、環境学習を目的としたフィールドにリニューアルすることとなりました。

─工期は2005年10月から2007年1月までと長期間ですね、どのように工事が進められていったのでしょう。

工事を進めるにあたっては、現状の環境の良いところを残しながら、大きく分けて2つの面に配慮しながら進めました。

生きものへの配慮
  • 生物の採取・移植

    生物の採取・移植

    工事によって「生きもの」を傷つけないように、休眠期に狙いを定めて工事
  • 以前子ども用プールとして使われていたビオトープの「泥」や「魚」や「水生植物」は、仮設の池や水槽に移すなど繊細な環境を壊さないように意識
  • 改修区域内に生えている希少な植物には、保護区を設定
環境への配慮

鬱蒼としていた森は、木々の伐採や枝切りを行いましたが有効活用することを意識しています。

  • 代採された木を使ったサイン

    代採された木を使った
    サイン

    伐採された木⇒公園内のベンチや誘導サインへ加工
  • 枝⇒細かくしてチップにし燃料用として加工(公園内にチップ化するプラント建設)

具体的な工事の進め方としては

  1. 画像保護区と工事エリアを仕切り、子ども用プール跡にいる生きものを仮の設備に移し
               ↓
  2. 子ども用のプールを取り壊し
               ↓
  3. 流れ(全長約130m)、池(面積600m2)の基盤をコンクリートと防水シートで作り、
               ↓
  4. その上に土や砂利、石などを敷き詰め、瀬やふちを作り
               ↓
  5. 水を循環させるポンプ施設を設置
               ↓
  6. 溝を掘った土を利用して築山をつくる

画像以上のような基本的な環境が整ったところで、水を流し仮の池に移していた「生きもの」を川に放流し、水生植物の植付や築山の植栽を行いました。水辺周辺の植栽も植物のサイクルに合わせて進めていきましたので、植える時期が限定されるため工期が長時間必要とされました。

─無理やりその環境を作りあげるのではなくて、「生きもの」のサイクルに合わせて進めていったのですね。

環境省・プレック研究所(設計担当)・大成建設の3社で、生きものと共存しながらどうやって工事を進めるか、計画を修正するなど話し合いながら計画を進めていきました。
相手は野生の生物ですから、気に入った環境が出来れば自然と集まってきますし、もし気に入らなければ一度やって来てもまたすぐ出て行ってしまいます。

そこで、石組みや植栽にあたっては、生きものが生息しやすい環境を考えながら配置を検討しました。相手が野生の生き物なので、どうなるか心配していましたが、工事が進んで池に水が入り植物が植えられるとすぐに、カワセミやカメなどが集まってきて、安心しました。

カワセミ

カワセミ

イシガメ

イシガメ

─ビオトープが完成し、今後どんな場所になっていって欲しいですか。

生きものがさらに集まる場所へ、来園者の方が植物や生物の成長を何度も見に行きたくなる場所になっていって欲しいです。私達ができることは、いい環境にする導入部分だけなので、ここから先もよいビオトープに育っていくといいなと考えています。

私自身、ビオトープに携わったのは2例目でしたが、今回は現場に直に携われるよい機会となりました。建設という事業に関わる私達ですが、環境対策は不可欠な要素になってきています。今後も自然をいかしながら建設していくという仕事に関わっていきたいです。

─本日はありがとうございました。
新宿御苑管理事務所 田井 様から一言
環境省自然環境局 田井 謙一郎 様

環境省自然環境局
新宿御苑 管理事務所
田井 謙一郎 様

2007年1月23日にリニューアルオープンした「母と子の森」には校外学習をする幼稚園児から一般の方まで大勢の方にお立寄りいただいています。
母と子の森には、せせらぎや池、特徴あるさまざまな森があり、一周430mのかんさつの道を歩くと変化に富んだ自然を楽しんでいただけます。最近では、せせらぎの音に耳を傾けたり、池をのぞいてメダカを観察されているお客様をよく見かけます。

今回のプロジェクトは、設計会社、大成建設さん、我々の3者で連携をとり、意見を出し合い話し合いながら進めることができました。大成建設の担当者の方にもきめ細かい対応をしていただけましたので、思い描いていたように水の流れがつながった時には嬉しかったですね。

画像工事が完成して、やっと自然観察のフィールドとしてのスタートラインに立ったところです。メダカも増えましたし、鳥もやってきています。環境が整っていけば個体数もさらに増えていくでしょう。
新宿御苑としては、現在ある豊かな生態系やたくさんの動植物が生きていきやすい環境を継続し、昔から残っている貴重な動植物の個体数を増やし、生物の生息空間としての質を高めていきたいと考えています。

また都会で暮らしていると自然界と関わって生きているのを忘れがちになりますので、生きものと人間が触れ合える場所として皆さんに来苑していただければと考えています。
今後は、気軽に自然を体験していただくプログラムを計画していきます。是非ご参加下さい。

新宿御苑「母と子の森」のビオトープを見学して

4月初旬、桜が残る新宿御苑の「母と子の森」をご案内いただきました。完成したビオトープは、かなり大規模に作られており、山へ散策へ行き“ほっ”とさせられる水場のような場所になっていました。

木立の奥には新宿南口のビル群が見えるのですが、目の前からは「せせらぎの音」が聞こえてくるのです。遊歩道がほどよい距離に設置されているので耳に心地よく、水の流れを見ているだけで癒され都心にいることを忘れる気持ちよい空間が広がっています。

画像「新宿御苑は昔行ったことがあるけど。。。」と思った方、変化し続けている新宿御苑に是非お立寄り下さい。
「母と子の森」には日本ではあまり見ることができない「巨木のラクウショウ」を見ることができますよ!

新宿御苑:http://www.env.go.jp/garden/shinjukugyoen/
開園時間:9:00〜16:00
入園料:大人 200円 小中学生 50円
休園日:月曜と年末年始

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大成の人×技術

環境本部 環境保全グループ エンジニア
岡田 美穂

生き物のスキマ 〜ニッチ〜