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大成建設のリニューアル特集 第10回 リニューアルテーマ「非構造部材(天井)の地震対策」その1

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)では、地震の揺れによる建物の柱や梁、耐震壁、床といった骨組み(建物の構造体)の被害は比較的少なかったものの、非構造部材(地震などの外力を受け止めない建物の構造体以外の部材)とりわけ天井の脱落事故が広範囲にわたって発生し、人的被害も発生しました。また建物がある期間使えず業務が行えなくなる事例が多く確認されました。

このような状況を踏まえ、国土交通省は建築基準法の改正を検討、建築物の天井脱落対策関連告示(国土交通省告示第771号他)が2013年8月に公布され、2014年4月1日より施行されました。

法改正の概要(告示の内容)

東日本大震災では大規模天井の被害が多大であったことから、今回の法改正では、脱落によって重大な危害を生ずるおそれがある天井を「特定天井」と位置づけ構造耐力上、安全なことを確かめることが義務付けられました。
「特定天井」は、建築基準法施行令第39条において、次の3つを全て満たす“吊り天井”と定義されています。

  1. 居室、廊下その他の人が日常立ち入る場所に設けられるもの
  2. 高さが6mを越え、その水平投影面積が200m2を超えるものを含むもの
  3. 天井面構成部材等の単位面積質量が1m2当たり2kgを超えるもの
特定天井の算定例
  • 画像高さ6m超、水平投影面積200m2超の部分が、特定天井の対象となる。
  • 画像高さ6m超の部分と6m以下の部分が接合されていれば、高さ6m以下の部分を含めて特定天井の対象となる。(ただし、高さ6m以下の部分の水平投影面積は含まない。)
  • 画像高さ6m超の部分が梁・垂れ壁で分割されていても、ひと続きの天井として扱う。(ただし、梁・垂れ壁の水平投影面積は含まない。)

この「特定天井」には、中地震※1で損傷しないことが求められています。これにより中地震を超える一定の大きさの地震においても脱落の低減を図ることを目標としています。大地震※2時の性能としては示されていませんが、これは現在の技術的知見において、大地震時には柱、梁、床などの構造耐力上の主要な部分から吊られた天井の変形等を予測することが困難であるためです。

「特定天井」への対応は、これから計画され設計・施工される新築建物と、既に完成し使用されている既存建物とでは、若干異なります。

※1 気象庁の震度階Ⅴ弱程度(出典:日本建築構造技術者協会HP)
※2 気象庁の震度階Ⅵ程度(出典:日本建築構造技術者協会HP)

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新築の建物への対応

まず新築建物に新しい「特定天井」を作る場合は確認申請時の審査対象とされ、次のいずれかのルートで中地震で天井が損傷しないことを検証する必要があります。

  • 仕様ルート
    耐震性等を考慮した天井の仕様に適合することで検証する方法。
  • 計算ルート
    天井の耐震性能を計算で検証する方法。
  • 大臣認定ルート
    複雑な天井等を、個々の建築物の特性に応じ時刻歴応答解析等で検証する方法。もしくは一定の設計ルール(仕様、計算方法)について性能評価で検証し認定する方法。

“建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説”※3では、具体的な対応策の一例として、仕様ルートの概要が示されたモデル図(一部分)が公開されています。

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仕様ルートで天井を構築するにはモデル図で明記されている項目の他にも多くの条件を満たす必要があります。詳細については同解説等で確認する必要があります。

※3 出典:国土交通省国土技術政策総合研究所、独立行政法人建築研究所、一般社団法人新・建築士制度普及協会

既存の建物への対応

既存建物の「特定天井」については、2014年4月の施行時点においてすぐに対策をとらなければならないといった義務はありません。しかし「特定天井」のある建物に対して確認申請が必要となるような増築、大規模の修繕、大規模の模様替を行う場合は、既存の「特定天井」に対して既存遡及が発生します。
この場合は、新築時の基準にあわせて天井を作り直すかもしくは落下防止措置による対策が必要となります。
なお落下防止措置については既存天井にのみ適用できる対策ですので、新築時および増改築時に新たに構築する天井には適用できません。

また、防災拠点施設など特に早急に改善すべき建築物に対しては対策をおこなうよう行政指導されることがありますし、定期報告制度を活用した状況把握が行われることもありますので、建物によっては増築や大規模な修繕を行わない場合でも、早めの対応が必要となることがあります。

落下防止措置について

落下防止措置とは、天井が万が一壊れた場合でも、施設利用者等にぶつかる高さまでの落下を防止する方法です。壊れた天井を一時的に保持することで、施設利用者が無事に避難できるようにすることが主な目的です。壊れた天井を保持したままでの永続的な利用を想定したものではありません。

落下防止ワイヤーによる落下防止措置例

落下防止ワイヤーによる落下防止措置例
(建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説より抜粋)

※本文に掲載している資料・図の出典:
“建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説”(国土交通省国土技術政策総合研究所、独立行政法人建築研究所、一般社団法人新・建築士制度普及協会)

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