ホーム - 特集 - 大成建設のリニューアル特集 - 第7回 リニューアルテーマ「立体自動倉庫の地震対策」─サプライチェーンと物流の事業継続

大成建設のリニューアル特集 第7回 リニューアルテーマ「立体自動倉庫の地震対策」─サプライチェーンと物流の事業継続

多くの企業が複雑に関係しあう現在のビジネスでは、サプライチェーンの一つが停止しただけでも、その影響は広範囲にわたり、回復には長い時間と負担がかかります。東日本大震災では大きな揺れが広い範囲に伝わり、各地で様々な被害が発生する中、物流やサプライチェーンも長期間にわたり停止しました。

今回のテーマではこうした被害状況を鑑み、物流とサプライチェーンの事業継続性の視点から、その主要施設である「立体自動倉庫」の地震対策について、3回のシリーズで考えていきたいと思います。
1回目の今回は、こうした物流とサプライチェーンのなかで、「立体自動倉庫」の位置づけとそのリスクの捉え方について見て行きましょう。

サプライチェーンによる自社BCPへの影響

製造業において、自社工場で製造した製品等が取引先へと届くまでには、原材料・資材メーカーや物流会社(倉庫、運送)など多くのサプライヤ及び通信インフラ会社等の協力が欠かせません。その中でも特にモノを動かす物流は、自社工場外におけるサプライチェーンの重要なキーファクターです。

2004年に発生した新潟県中越地震で被災した企業108社を対象に「事業中断要因」の分析を行った結果、最も多かったのは建築設備といったハードの「耐震性」ですが、次点に「サプライチェーン」が挙げられています。
この地震では、建物や生産設備に直接的な被害がなかったにもかかわらず、原材料を調達できなかったことから在庫不足に陥り生産停止になった例や、周辺の道路や鉄道の被害による交通網の遮断が原因で営業停止に追い込まれるなどの深刻な問題も発生しました。

また、東日本大震災では関東地方まで含めた広域で多くの物流施設が被害を受けました。経済産業省が2012年4月26日に公表した東日本大震災後の産業実態緊急調査「サプライチェーンの影響調査」では、1週間以内に調達先の被災状況や部材調達の可否などを把握できた企業の割合は素材業種で6割強、加工業種では4割でした。その一方で、把握に1週間以上を要した企業も多く見られました。サプライチェーンの状況把握がいかに難しかったのかが推察されます。
これらのことは、長期間にわたり流通機能を回復できなかった大きな要因といえるのではないでしょうか。

新潟県中越地震における事業中断要因

新潟県中越地震における事業中断要因
当時のマスコミ情報を中心に、事業継続がはかれなかった要因を整理したものです。

東日本大震災における自社サプライチェーンへの影響把握時間

東日本大震災における自社サプライチェーンへの影響把握時間
「サプライチェーン影響調査(経済産業省発表資料)」より作成

サプライチェーンのリスク把握

こうした事態を避け、どの様な場合でも取引先に製品を届けるという、「真」の事業継続計画を考えた場合、自社工場以外にも視野を広げ、サプライチェーン全てにおいて事業の継続性が確保されている必要があります。
そのためには関連するサプライヤとの間で

  1. 自社との関係を明らかにし、サービスが停止した場合の影響度を検証する
  2. サービスが停止するリスクを洗い出す
  3. リスク対応を実施してもらう
  4. 自社にとって重要なサプライヤと判断した場合はBCP策定を要求する
  5. サプライヤのリスク対応やBCPと自社のBCPとの整合性を検証する
  6. 日頃からリスクコミュニケーションをとる

などの項目について、綿密な検証を行なっておく必要があります。

サプライチェーンの構成例

サプライチェーンの構成例
サプライチェーンとの関係がどの様になっているのかを俯瞰的に検証すると共に、被災によりそれぞれの関係が断絶してしまった場合の対策を考えます。

また、検証の際は全体的に現状把握を行い、自社工場との関係性を明らかにすることが重要です。

  • どの工程で、どのサプライヤが関係しているか
  • あるサプライヤのサービスが停止した場合、自社のどの工程が停止するか。また代替は可能か
  • 代替ができず1つのサプライヤに依存しているサービスは何か
  • 防災やBCP体制はどうか
  • サービスレベルが契約書などで明確になっているか

などが、ポイントになります。

この検証作業によって、自社工場のサプライヤへの依存度や重要性、被災時のサービス停止リスクや復旧力が把握でき、代替の対応を検討することができます。
次に、機能停止という事態をなるべく引き起こさないようにするために、減災対応を検討・実施していきますが、それには機能停止につながる可能性が一番高い要因を洗い出す必要があります。その洗い出しには

  • 自然災害(地震・津波・洪水など)による被災リスク
  • 周辺施設の火災/爆発などによる被災リスク
  • サプライヤから自社工場までの配送ルートと途絶リスク(緊急輸送道路との位置関係など)

といった立地に関わるリスクの評価からアプローチすることが重要です。

自社BCPにおけるRTOと原材料・製品のストック

サプライヤと自社のRTOの整合性

サプライヤと自社のRTOの整合性
自社のBCPにおけるRTOを実現するには、Aのギャップを埋める原材料(部品)のストックをする必要があります。また、自社製品の出荷を止めないようにするには、Bの間の製品を自社にストックする必要があります。

リスク要因が判明したら、そこから受けるダメージを低減するための減災対策を検討します。減災対策については、リスク対応のガイドラインを策定し、サプライヤにも利用してもらうことで、関係各社間のばらつきのない対応が可能になるでしょう。

BCPにおいて特に重要な「目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)」は、自社とサプライヤの間で整合性をとる必要があります。自社から要求する目標復旧時間がサプライヤにとって厳しい日数ならば、必要量の原材料を自社もしくはサプライヤでストックすることになります。また、自社製品の供給を継続するためには、自社製品のストックも必要ですし、同時に、ストックしている原材料や製品を守り、出荷を継続できるようにすることも重要です。

東日本大震災における生産・物流施設の被災状況

東日本大震災における生産・物流施設の被災状況(拡大)
立体自動倉庫では荷崩れによる被害での機能停止が多く見受けられました。

物流は、どの様な要因であれ、結果的に道路の通行不可・燃料の不足といった社会インフラの影響を受ける可能性が大きいため、まずは在庫配置を検討することが有効と考えます。
複数の物流センターに製品在庫を配置することで、生産工場の停止や物流センターの非稼動が発生した時も、安定供給が可能となります。

しかし、現在の日本で、最も大きいリスク要因であり、全国に共通のものとしては、やはり、「地震」が挙げられるでしょう。
東日本大震災では、大きな揺れが震源から遠く離れた神奈川県あたりにまで到達しました。東京湾岸地域でも地盤の特性もあって、広範囲の物流センターが影響を受けましたが、何れも「立体自動倉庫」が被害を被っています。

これは、震度7や6強のような強い揺れだけではなく、繰り返し発生した余震や、長周期地震動により立体自動倉庫の背の高いラックが影響を受けたためと思われます。こうした立体自動倉庫の被害状況を調査していくと、構造体そのものの被害よりも荷崩れによる被害が多く、復旧への影響も大きかったことがわかってきました。

立体自動倉庫は、地価の高い都市部の物流センターにおいて空間効率を高め、また、省力化・作業の安全性を向上するために欠かせない施設になっています。

次回では、この立体自動倉庫における地震被害とその対策について考えてみたいと思います。

「サプライチェーンの事業継続」に関するより詳しい情報はこちら!

Taisin Net 大成建設の地震対策Webサイト特集記事:次に備える4 減災対策への取り組み その2
─サプライチェーンの事業継続─

関連記事

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第11回 リニューアルテーマ「非構造部材(天井)の地震対策」その2

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第10回 リニューアルテーマ「非構造部材(天井)の地震対策」その1

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第9回 リニューアルテーマ「立体自動倉庫の地震対策」─既存立体倉庫の減災とサプライチェーンの対策へ

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第8回 リニューアルテーマ「立体自動倉庫の地震対策」─立体自動倉庫の地震被害とその対策の考え方

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第6回 リニューアルテーマ「超高層ビルの長周期地震動対策」─より安全、安心に向けての対策

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第5回 リニューアルテーマ「超高層ビルの長周期地震動対策」─超高層ビルへの影響とリスク、その対策

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第4回 リニューアルテーマ「超高層ビルの長周期地震動対策」─長周期地震動とは何か?

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第3回 リニューアルテーマ「省エネ」─時代とともに進化する、オフィスビルの空調システム

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第2回 リニューアルテーマ「省エネ」─省エネ、CO2対策と補助金活用支援

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第1回 リニューアルテーマ「省エネ」─今からでも間に合う節電対策

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

建物はここまで生まれ変わる!!「大成建設のリニューアル」

画像

事例ライブラリ[ものづくりの施設]

大成建設株式会社 技術センター研究本館

研究者の声を反映して生まれ変わった研究施設。リニューアルは大成功?