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大成建設のリニューアル特集 第6回 リニューアルテーマ「超高層ビルの長周期地震動対策」─より安全、安心に向けての対策

東日本大震災で観測された関東地方の長周期地震動

東北地方太平洋沖地震の地域別の地震動解析グラフ

東北地方太平洋沖地震の地域別の地震動解析グラフ
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地震の揺れ方は、同じ地震であってもその地域における地盤の性状などによって大きく異なってきます。

2011年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」は、日本周辺で発生した地震としては観測史上最大規模(M9.0)であり、三陸沖から茨城県沖にかけてのプレート境界部における500km×200kmの広大な領域が破壊されたと推定されます。
この時の地震波は発生から約2分で新宿に到達しています。その後、約13分にわたって関東平野を揺らし続けました。地震の特徴としては、短周期成分と比較すると長周期成分が大きく、継続時間の長い長周期地震動により、超高層ビルが共振を起こし長時間揺れ続けました。

新宿センタービルにおける制震効果

既存超高層ビルの世界初の超周期地震対策として、T-RESPO構法による制震バリューアップを導入した新宿センタービルも同じ地震を受けています。
新宿では、地震が到達してから約2分後に地面の揺れ(加速度)が最大となりました。その時の新宿センタービルの変位は約10cm程度でしたが、その後、次第に揺れ幅が大きくなり、頂部の変形が最大となったのは地震の到達から4分ほど経過した頃でした。
その時の変位は片側で54cm、反対側にもほぼ同じ変形をするため、頂部における最大揺れ幅は、108cmほどになったことが観測されています。

その後の解析によると、もし対策を行っていなかった場合は、最大揺れ幅が140cm程度になっていたであろうことがわかりました。つまり、-22%の低減効果があったと言えます。

制振ダンパー(T-RESPO)の有無による屋上階変形の比較(解析値)

制振ダンパー(T-RESPO)の有無による屋上階変形の比較(解析値)

揺れの強さである屋上階の最大加速度は、対策をしない場合の228.1gal(解析値)に対し、対策を行った実測値では161.3gal(観測値)と、29%の低減効果も確認されました。

また、長周期地震動を受けた超高層建物は、地震そのものの揺れが収まっても、その後も長い時間揺れ続けることがわかっています。
建物の揺れ幅が地震終了時に比べ1/2以下になるまでの時間についても、対策をしない場合で50.2 秒(解析値)に対し、実際には24.5秒(解析値)で収まっており、継続時間については半減したことが確認されました。

屋上階短辺方向の後揺れの様子(解析値)

屋上階短辺方向の後揺れの様子(解析値)

これからの長周期地震動対策に向けて

今回の地震はその規模も巨大であり、広範囲で大きな被害が生じています。地殻が大きく変動し、当分の間地震が発生しやすい不安定な時期が続くとも予想されています。また、東海・東南海・南海地震や、それらが連動して起こる地震も懸念されています。その場合はさらに大きなエネルギーを持った長周期地震動が、超高層ビルの建ち並ぶ都市部を襲います。

リスクシナリオの例

リスクシナリオの例(拡大)
応答解析の結果から揺れの強さや液状化の可能性、その他リスクを予測し、その結果をもとに「起こりうるであろう」状況のストーリーを構成し、効率的で効果的な対策に役立てていきます。

超高層建物は多くの人々が生活し、活動する場です。
地震時の安全性を確保するのはもちろんのこと、例えば、エレベータが早期に復旧できなくなれば上層階は「孤島」に近い状況になるなど、被災後における建物の機能維持が高いレベルで求められます。
特にオフィスビルの機能維持はテナント企業においても、その事業継続性の確保に直結する問題となります。エレベータはもちろん、電気、ガス、水道といったインフラ機能が代替によって維持あるいは復旧に併せてすぐに利用できることは、BCPを考える上でも大変重要です。

また、地震に対する安全性を確保するためには、上記に挙げたハード面における対策のみならず、

  • 緊急地震速報を利用して、回避行動や避難をスムーズに行う
  • 避難、誘導のためのサインを整備する
  • 避難、誘導マニュアルを整備する

といったソフト面の計画、整備を同時に行い、包括的な対策を進めていくことが極めて重要です。

長周期地震動は地震対策の新たな課題ではあっても、特別な課題ではありません。
まず現状を把握し、適切なリスクシナリオによって、地震というリスクに対し、包括的にプライオリティを付けた対策を計画立てて行っていくこと。
これはどのような地震であっても変わる事の無い基本事項といえます。

使いながらの超高層ビル耐震バリューアップ
─新宿センタービル長周期地震動対応工事の現場から─

画像世界初、既存超高層ビルの長周期地震動対策は、利用者の安全はもとより、その資産を守り事業継続性を確実にすることを目指したものでした。

特集記事:耐震補強の現場

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