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大成建設のリニューアル特集 第5回 リニューアルテーマ「超高層ビルの長周期地震動対策」─超高層ビルへの影響とリスク、その対策

超高層ビルはどうなるのか?

強いエネルギーを持った長周期地震動を受けると、超高層ビルなどの長い固有周期を持った建物はその影響を受け、大きく変形します。また、地震動そのものが終息しても、建物はそのまま長時間揺れ続けます。その結果、建物やその内部、中にいる人は大きな影響を受けます。

日本の超高層ビルはしなやかで粘り強い構造となっており、変形することで地震のエネルギーを吸収するしくみになっています。
そのため50階建ての建物の場合、大地震による長周期地震動を受けると最上階での加速度は最大300gal※1程度、左右2m程度の揺れ幅になる場合がある事も予想されますが、それがすぐに建物自体の倒壊、崩壊につながる恐れはありません。

※1 gal(ガル):地震動の加速度の単位。1galは1秒間に1cm/s加速する加速度(1cm/s2)のこと

しかし、超高層ビルごとに異なるエネルギー吸収の仕方によっては、大きく変形する長時間の揺れにより疲労が蓄積されるため、地震が収まったあとに破損の有無の点検や修繕が必要となる可能性もあります。また、一度の揺れでは影響がないとしても、何度も繰り返し同様の揺れを受けることで、何らかの損傷被害が生じる可能性も否定できません。
このため、現在の構造が、どの程度のエネルギー吸収能力を持っているのかを確認しておくことが必要です。

また、建物の構造体そのものに影響はなくても、長時間続く大きな揺れは内部の人や、仕上げ材、設備等の非構造部材などに様々な影響が出る可能性があります。
上階では揺れ方が強くなる場合もあるので、家具や什器の転倒や移動も起こりうるでしょうし、揺れ幅が大きい分、その移動も大きくなることが予想されます。

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対策の考え方

層間変形角

※2 層間変形角
地震時の一階の高さあたりに対する水平方向の変形の割合のこと。水平変位/階高。

長周期地震動は、その「大きくゆったりとした長時間の揺れ」によって建物やその内部に様々な影響を及ぼします。そのため、揺れのエネルギーを吸収し、できるだけ変形を小さく(層間変形角※2で1/100以下)し、揺れを早く収めることが全ての対策の基本となります。

既存の建物には制震装置を組み込み、より高いエネルギー吸収能力をもたせる「制震レトロフィット」の手法が効果的です。
建物の変形量が小さくなれば、それによって生じていた内装のひび割れや配管等への影響も小さくなります。また、エネルギーを吸収する事で、結果的に加速度を抑える効果も期待できるものもあり、例えば加速度が最大200ガル以下になれば、什器や設備機器などの転倒の可能性は大幅に下がります。

制震レトロフィット

制震レトロフィット

制震による対策は揺れそのものを抑える基本的な対策であり、超高層ビルへの影響全体にわたって効果があります。そして制震対策をした上で、建物の揺れの状況と目標とする安全性や機能維持レベル等を照らし合わせて、

  • 什器や設備機器などの固定
  • 天井の落下防止対策
  • エレベータの安全確保・早期運転再開対策

など、それぞれ個別に必要かつ適切な対策を取っていく事が、効果的で経済的な対策へとつながります。

ところで超高層ビルでは地震後の縦動線の確保が特に重要です。
一般的な建物と同様、安全のため、まずはエレベータを最寄りの階に停止させ、閉じ込めを防ぐ事が基本です。
長周期地震動は到達までに時間がかかるので、従来の管制運転に加え「緊急地震速報システム」とも連動させ、自動的に停止させるのが即効性の高い方法といえます。

しかし一時停止させるだけではロープの共振による引っかかりなどの発生を回避する事はできません。早期のエレベータの稼働再開をはかるには、根本的な対策として「ロープへの振れ留めを施す」ことが最も有効です。
これらの対策は個別に行う事も出来ますが、制震による全体対策とのバランスを考えて行う必要があります。そのためには、まずは建物全体がどのように揺れるのかを検証することが重要です。

T-RESPO構法

画像特に大成建設が独自に開発した超高層ビルの制震レトロフィット向けの制震装置。
軸力制御オイルダンパーを用いることにより、通常の制震装置では必要となる既存の柱や梁の補強が基本的に不要です。溶接を使わない緊張材による圧着工法と併せ、建物を使用しながらの工事が可能です。

T-RESPO構法(耐震ネットにジャンプします)

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