ホーム - 特集 - 大成建設のリニューアル特集 - 第4回 リニューアルテーマ「超高層ビルの長周期地震動対策」─長周期地震動とは何か?

大成建設のリニューアル特集 第4回 リニューアルテーマ「超高層ビルの長周期地震動対策」─長周期地震動とは何か?

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では、震源から遠くはなれた東京や大阪に長周期地震動が伝わり、超高層ビルを大きく揺らしました。大都市に建つ超高層ビルにとって、新たな課題として取り上げられてきた「長周期地震動」の影響が現実のものとなりました。今後、発生が予想されている南海トラフに関連する地震では、さらに数倍の強く大きな「長周期地震動」も予想されています。

この新たな脅威に対応するためには、どのような対策をとっていけばいいのか、事例を含めて3回のシリーズでお届けします。
今回は、長周期地震動についての基礎知識として「それがどのようなもので、我々にどんな影響があるのか」についての概要を解説したいと思います。

1.「短周期地震動」と「長周期地震動」

揺れの周期とは、揺れの一往復にかかる時間を秒で示します。ブランコを例にしますと、ブランコを押して戻ってくるまでに2秒かかれば、周期は2秒です。
実は、一回の地震の揺れの中には、実は様々な周期の揺れが混在しています。

画像

一秒程度以下の短い周期で揺れる振動は、「短周期地震動」と呼ばれています。「短周期地震動」は揺れの時間も比較的短く、あまり遠くまで伝わることはありませんが、一般的に強いエネルギーを持っています。
2秒から3秒以上の周期でユラユラとゆっくり揺れる振動は「長周期地震動」と呼ばれています。揺れている時間も長く、遠くまで伝わるのが特徴です。

地震動周期のイメージ図

地震動周期のイメージ図

2.地震動周期の違いによる建物への影響

建物が持つ揺れの周期もそれぞれで決まっていて、それを固有周期といいます。固有周期と同じ周期で建物を揺らすと、「共振」という現象を起こし大きな影響を受けることになります。
建物の固有周期は、建物の高さでおおよそ決まってきます。10階建て程度の建物であれば、固有周期は0.6〜0.8秒くらいです。一般的な地震ではこの周期と一致する「短周期地震動」の揺れが強いエネルギーを持っていて、建物がそれに共振してしまいます。このため、現行の耐震基準では、こうした共振が起きたとしても、崩壊や倒壊に至らないように設計強度などを定めているのです。

一方、高さが100mの超高層ビルですと、建物の固有周期は3秒くらいになります。
このため、超高層ビルはその固有周期とは一致しない短い周期の地震動に対しては、共振を起こさないため大きな影響を受けることなくやり過ごせます。しかし、同じ周期をもつ「長周期地震動」には共振してしまいます。

通常と長周期地震動による揺れ

通常と長周期地震動による揺れ(拡大)

3.判明した長周期地震動の問題

超高層ビルが建設され始めた当時は、こうした長周期の揺れは遠方まで伝わるものの、もともとそのエネルギー自体が小さく、建物を揺らすほどの力はないと考えられていました。

その後、「地球シミュレーター」を用いたシミュレーションにより、強いエネルギーを持った長周期地震動が発生する可能性があり、長い距離を伝搬する可能性があることがわかってきました。
実際に2003年の十勝沖地震の際には、震源から200km以上はなれた苫小牧の石油タンクがスロッシング(液体の揺れ現象)による地震被害を受け、それが長周期地震動による被害であることが確認されました。
すでに2000年5月の建築基準法の告示において、超高層ビルを新築する際には長周期地震動の影響を考慮することが求められていましたが、この被害を受け長周期地震動に関する研究が、より盛んに進められるようになりました。

ところで関東平野をはじめとして、大都市がある平野は、硬いすり鉢状の地盤の上に、軟らかい地盤が重なっている構造になっています。この地盤に、長周期地震動が伝わってくると、地盤が共振して、長周期地震動を増幅させてしまうこともわかりました。
そして、3.11の東北地方太平洋沖地震の際に、東京や大阪に建っている超高層ビルが大きく揺れました。

関東平野をはじめとした日本の大都市がある平野の地盤イメージ

関東平野をはじめとした日本の大都市がある平野の地盤イメージ

それまで指摘はされていたものの、実際にこれほど大きな長周期地震動による超高層ビルの揺れが観測されたのは初めてといって良いでしょう。この地震では、それまでに考えられていた長周期地震動の揺れの継続時間は8分程度でしたが、それを大きく超え、13分間も揺れ続けました。この揺れにより、多くの超高層ビルでスプリンクラーの破損による浸水や壁や天井などに被害が発生しています。
次々に解明されてくる報告や分析結果を受け、国土交通省では、新しい「超高層建築物等における長周期地震動への対策試案について」を現在検討中です。

次号では、「超高層ビルが受ける影響とその対策」についてご紹介する予定です。ご期待ください。

関連記事

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第11回 リニューアルテーマ「非構造部材(天井)の地震対策」その2

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第10回 リニューアルテーマ「非構造部材(天井)の地震対策」その1

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第9回 リニューアルテーマ「立体自動倉庫の地震対策」─既存立体倉庫の減災とサプライチェーンの対策へ

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第8回 リニューアルテーマ「立体自動倉庫の地震対策」─立体自動倉庫の地震被害とその対策の考え方

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第7回 リニューアルテーマ「立体自動倉庫の地震対策」─サプライチェーンと物流の事業継続

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第6回 リニューアルテーマ「超高層ビルの長周期地震動対策」─より安全、安心に向けての対策

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第5回 リニューアルテーマ「超高層ビルの長周期地震動対策」─超高層ビルへの影響とリスク、その対策

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第3回 リニューアルテーマ「省エネ」─時代とともに進化する、オフィスビルの空調システム

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第2回 リニューアルテーマ「省エネ」─省エネ、CO2対策と補助金活用支援

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

第1回 リニューアルテーマ「省エネ」─今からでも間に合う節電対策

画像

特集 大成建設のリニューアル特集

建物はここまで生まれ変わる!!「大成建設のリニューアル」