ホーム - 特集 - 物流特集 - 大成建設フォーラム「製造業の物流新時代」 後編 3つの視点で読み解く、製造業物流の新潮流

物流特集 大成建設フォーラム「製造業の物流新時代」 後編 3つの視点で読み解く、製造業物流の新潮流

前号では、近年の製造業物流における動向と取り組むべき課題などについて、BCP(事業継続計画)の観点からお話ししました。今号では「物流の“現場力”」について改めて考えるとともに、「グローバル化による物流への影響」についてご紹介します。

物流の「現場力」とは

企業活動に大きな影響を及ぼすため、さまざまな業界で改革が進んでいる「現場力」。
物流企業のあいだで求められている「現場力」とは、一体どのようなことなのでしょうか。
現場力の優劣を決める要素とは何であるのか、また、その優劣によって企業活動がどのような影響を受けるのかなど、物流の現場力について考察します。

生産性の格差は3〜6倍!

2007年度〜2010年度の3PL事業の営業利益率の推移(図1)を見てみると、利益率8%以上の企業と3%未満の企業の割合が年々上がっており、企業間における利益率の二極化が進んでいることが分かります。

図1 3PL事業の営業利益率の推移

図1 3PL事業の営業利益率の推移

「同じ業界のライバル同士で、儲かる会社はどこが違うのだろうか?」という視点で「会社の規模」と「荷主の業種」別に検証したところ、相関性は見当たりませんでした。そこで「物流コスト」に着目し、300社を超える物流会社に対して行ったアンケートの結果を分析してみると、現場の生産性に3倍〜6倍もの格差があることが確認できました。

図2 作業員1人1時間当たりの処理行数=物流生産性

図2 作業員1人1時間当たりの処理行数=物流生産性

生産性の高い上位20%の現場では、作業員1人につき、1分当たりの処理行数が「1」であるのに対し、全体の平均処理行数はその1/3です。つまり、同じ内容の庫内作業を行う際に、1分で処理できる現場がある一方、3分かけて処理する現場があるということになり、生産性の格差に大きな影響を与えていると言えます。また、生産性と作業の品質、サービスレベルは比例することが分かりました。

図3 リードタイム内納品率と生産性

図3 リードタイム内納品率と生産性

図4 リードタイム(全業態)

図4 リードタイム(全業態)

収益性の高い企業の現場はどこが違う?

高い生産性と収益性、作業品質を確保している物流現場では、優れた現場力を構築・維持するためにさまざまな取り組みを行っています。
例えば、

  • 庫内における在庫のロケーションメンテナンスを頻繁に(月1回以上)行い、毎日変化する製品品目や出荷量にスムーズに対応する体制を整え、作業効率アップを図っている。
  • 現場管理の運営手法として、作業の生産性を日別に評価する「日別業務管理」と、物量に合わせて作業員数を調節する「レイバースケジューリング」を導入している。人件費や物量を毎日記録し、「事前に計画していた内容と実績とが乖離していないか」、「改善すべき点は何か」など実績を管理し、見直し、現場へのフィードバックを積み重ねている。

など、日々変化する物流現場の特性に合わせた最適な取り組みによって、つねに現場力を向上させています。

グローバル化による物流への影響

グローバル化の進展で物流管理の対象エリアも海外に広がっています。とりわけ新興国の国内市場における物流が大きな課題になっています。

図5 日系3PL企業の海外進出状況

図5 日系3PL企業の海外進出状況

日本や欧米などの先進国と比べて新興国は物流市場が未成熟です。そのため現地に進出した日系企業の多くは当初、日系物流企業をパートナーに選びます。しかし、ニッチな高付加価値品からボリュームゾーンに事業が広がっていくと、日系物流企業の割高なコストが制約になってきます。

日系物流企業にとっても新興国の国内物流事業は新しいチャレンジです。物量は大きくても料金単価が低いため、人件費の割高な日本人駐在員を投入すると採算が合いません。物流事業に対する法規制や運用ルールが曖昧で変わりやすいことも事業展開の妨げになっています。

日本や先進国における物流のモデルを、そのまま新興国に移植することはできません。新興国においては、その市場における事業展開と物流環境を反映したモデルを、それぞれ構築する必要があります。その巧拙で競争力が大きく左右されることになっています。

中国の物流市場
図6 中国物流市場の主要プレーヤー

図6 中国物流市場の主要プレーヤー(拡大)

日本と中国の物流市場では、環境やプレーヤーが全く異なります。日本の物流市場は、宅配便事業が確立したことで開拓され、その後、インターネット通信販売事業が誕生しました。一方、中国の物流市場では、急速に拡大したインターネット通信販売事業の事業者が、国内に存在していなかった宅配便事業を興し、自ら物流も行うというビジネスモデルを確立しました。

中国の物流市場における主要プレーヤーのほとんどは現地系の会社であり、日系企業が入り込んでいくには、マーケティング戦略から具体的なオペレーションまで、中国における国内物流への最適化が欠かせません。

大矢 昌浩氏 プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部大学院修了。
日経BP社発行「日経ロジスティクス」記者、流通専門誌編集長を経て99年、ライノス・パブリケーションズを設立。
2001年4月に「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」創刊。同誌の編集発行人として現在に至る。
2004年4月〜07年3月、多摩大学大学院客員教授を兼務。

関連記事

画像

特集 物流特集 大成建設フォーラム「製造業の物流新時代」

前編 3つの視点で読み解く、製造業物流の新潮流