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物流特集 大成建設フォーラム「製造業の物流新時代」 前編 3つの視点で読み解く、製造業物流の新潮流

セミナーの様子

セミナーの様子

2013年7月25日(木)新宿センタービルにて、第1回大成建設フォーラム「製造業の物流新時代」を開催いたしました。
基調講演には、株式会社ライノス・パブリケーションズ 月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)編集長の大矢 昌浩様をお迎えし、近年の製造業物流における動向と取り組むべき課題などについてお話しいただきました。前編、後編の2号にわたり、講演内容を抜粋して連載いたします。

BCP(事業継続計画)のリアリティ

倉庫内の被害状況

倉庫内の被害状況

2011年3月11日に日本を襲った東日本大震災後の物流現場では、

  • 建物自体は無事であったが、自動倉庫が停止したり激しい荷崩れが起こるなど、庫内の被害が大きかった
  • 取引先から原材料を調達できなくなり、在庫不足に陥った
  • 周辺の道路や鉄道の被害により交通網が遮断したため、製品の出荷ができなくなった

など様々な理由によって一時的にオペレーションが停まり、復旧するまでに数週間〜数ヶ月もの時間がかかったという被害が報告されました。

東日本大震災をきっかけに企業のBCPに対する関心はますます高まっていますが、一方で、「1000年に一度と言われる災害に備えて莫大なコストをかけるのは現実的ではない」という意見も聞かれます。「どれくらいのコストをかけて、どの対策レベルまで行うべきなのか」を検証するうえでは、「経営層による判断が必要な要素」と「担当者レベルですぐ行うことのできる要素」の両観点からアプローチしていくことが有効と考えます。
例えば、

  • 拠点を分散する
  • 拠点の機能強化を図る(地震、津波などの災害に備える)
  • 在庫の積み上げを行う
  • 緊急時に代替できる通信手段、輸送手段、燃料を確保する

などの対策を実施するには、いずれも多くのコストを要するため、物流部門のみで検討・判断できる内容ではありません。経営層レベルで「顧客に対して、供給責任をどこまで果たすか」を決定したうえで、企業の方針に基づいた判断のもと、具体的な対策を実施することが重要です。

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現状では、多くの企業が「多大な費用と時間をかけて新拠点をつくり、在庫や機能を分散する」よりも、「現場ですぐにできることから優先的に行う」という姿勢でBCP対策に取り組んでおり、実際に物流を管理・運営する物流担当者は、「予測不可能ないかなる事態にも柔軟に対応できる強い組織力」を構築することが求められています。

荷主企業の現場ですでに取り組まれている具体策の一例

  • 設計
    ペットボトルのキャップなど、製品ごとに異なる部品を共通化・標準化することで、緊急時に代替品が使えるようにする
  • 調達
    第1次取引先から第2次、第3次・・・と、すべての取引先を遡って把握できるよう“サプライチェーンの見える化”を図り、安定した調達物流を実現する
  • 生産
    製品・顧客の最優先順位を決めて取り組むことで、制約下でも最適な供給を実現する
  • 物流
    緊急時の対応について、例えば「24時間以内に復旧する」など協力物流会社と事前に契約を交わし取り決めておくことで、確実な早期復旧を目指す
  • ICT
    自社や顧客の在庫、調達資材の物流を常に把握できるよう、システム上の見える化を推進する
  • 組織
    企業全体の行動指針を明確にするとともに、現場へ委譲しておくべき権限範囲を決めておくことで、各拠点との通信が遮断される状況に陥っても、現場の判断で業務を行う体制をつくる

次号では、「物流の“現場力”」について改めて考えるとともに、「グローバル化による物流への影響」についてご紹介します。ご期待ください。

大矢 昌浩氏 プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部大学院修了。
日経BP社発行「日経ロジスティクス」記者、流通専門誌編集長を経て99年、ライノス・パブリケーションズを設立。
2001年4月に「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」創刊。同誌の編集発行人として現在に至る。
2004年4月〜07年3月、多摩大学大学院客員教授を兼務。

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特集 物流特集 大成建設フォーラム「製造業の物流新時代」

後編 3つの視点で読み解く、製造業物流の新潮流