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FM(ファシリティマネジメント)特集 コンセプトプラニング 第4回 コンセプトプランニングの採用事例─病院編

大成ブリーフィング手法「コンセプトプランニング」のプロセスは、以下の4章で構成されており、お客様と設計者がともに理解できるブリーフ(設計与条件書)を作成することで、ブレのない施設づくりを実現します。

  • 第1章 ニーズの顕在化:大成建設のオリジナルインタビュー手法「T-PALET」による個別インタビューを実施
  • 第2章 方針の検討:チームディスカッション・課題の整理・課題の共有
  • 第3章 方針の確立:要求条件整理・シーンのストーリー(物語)化
  • 第4章 ブリーフの完成:目標の明確化・コンセプト構築・要求条件と制約条件の明文化

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新病院の完成パース(左:新館 右:本館)

新病院の完成パース(左:新館 右:本館)

今号では、大阪市旭区にある小児内科専門病院の社会医療法人 真美会 中野こども病院様の新病院計画※1における採用事例とともに、コンセプトプランニングのプロセス(1章から4章まで)の具体的な内容について、詳しくご紹介してまいります。

※1 新病院(新館・本館/地上3階建)建設の第一期工事として、大成建設の設計・施工により2013年4月に新館が完成しました。
現在、2014年12月の完成を目指して本館の建設工事が進んでいます。

第1章 ニーズの顕在化:個別インタビュー手法「T-PALET」を実施し、ニーズを引き出します

心理学を応用した個別インタビュー手法「T-PALET」を活用し、大成建設の専門スタッフがお客様の施設に関する環境やワークスタイルについて、さまざまな部署・役職の方々に一人ずつ本音をお聞きします。
T-PALETをはじめて5分も経つと、お話をする方のエンジンがかかり、自然とその方ならではの話題が広く展開されていきます。個別に抱えている要望や考え方を詳しくお聞きし、ニーズを引き出します。

中野こども病院の皆さまへの個別インタビューで顕在化したニーズ(一例)

医師、看護師、保育士など約23名の方々にご参加いただきました。

病気を治すだけでなく、子どもの笑顔がもどるトータルケアを行いたい
  • 「この病院に来院・入院してよかった」と、退院時だけでなく大人になってからも思ってもらえる子育て支援の病院にする。
  • 保育・栄養・心理など様々な専門家が、「遊んで笑う、食べて寝る」という子どもの生活の場を見守る専門病院にする。
母親が安心して付添える、プライバシーに配慮した環境をつくりたい
  • 子どもに安心感と落着きを与えられるよう、プライバシーに配慮した病室をつくる。
  • 母親と子どもが一緒に絵本を読んだり、折り紙を楽しんだりできる、明るく楽しい場をつくる。
交差感染の心配がない安全・安心な病院に
  • 交差感染防止に配慮しつつ、運用時に支障が出ない病棟計画を行いたい。

営業推進本部 ライフサイクルケア推進部 FM推進室 丸山 玄

画像医療福祉施設を計画する際に行うT-PALET調査では、経営者やスタッフの方々からも幅広いたくさんのご意見をお聞きします。
例えば、

  • 外来の待合を工夫し、患者さんの「長く待たされている」感覚を軽減したい
  • 患者さんに心のこもった接遇をしたい。不安な気持ちを少しでも和らげてあげたい
  • 患者さんとご家族のプライバシーが守られ、ゆっくり相談できる面談スペースを設ける
  • 患者さんの症状に応じて十分なケアができるような病室をつくりたい

などが挙げられます。
中野こども病院様の新病院計画では、「子どもにとって一番大切なことを考え、医療を提供する」という病院の理念を実現していく場としてふさわしい医療施設を構築するために、「展開していく医療とはどういうものなのか」、「そのためにはどのような病院づくりを行うべきか」について、様々な立場の方々から思い・考えをお伺いし、体系的にまとめました。

第2章 方針の検討:チームディスカッションを行い、課題を整理して共有します

お客様の個別ニーズを伺ったあと、そのまますぐに設計者が計画図面や絵を描いてみせると、例えば各部屋の面積配分や通路・出入り口の位置など、施設計画の細部についてのディスカッションを行いがちです。
コンセプトプランニングでは、T-PALETを用いて引き出したニーズをもとに、「将来的に実現したいことは何なのか」、「そのために施設はどういう風につくることが大事であるのか」など、ディスカッションすべき「真のテーマ」を明確にしたうえで、皆で話し合いをスタートし、具体的な要望や課題を整理し共有していきます。

中野こども病院様のケースでは、チームディスカッションにおいてT-PALETで整理したニーズをきっかけに、次のような要望や課題を共有・意見交換しながら、その後の方針を検討されました。

チームディスカッションで共有・意見交換されたテーマ(一例)

病院を経営する立場からの意見 患者さんを検査・治療する立場からの意見

第3章 方針の確立:「理想の施設に本当に必要なこと」=要求条件を整理し、シーンのストーリーを描きます

第2章で行ったディスカッションの結果をストーリー(物語)として書き起こし整理します。
前述の中野こども病院様でのチームディスカッションで得た意見をストーリー化した結果、次のようになりました。

チームディスカッション結果をまとめたストーリー(外来・待合スペースについて(一部抜粋))

外来の扉を開けると、親子の楽しい様子が目に飛び込む。待合の中ほどにある光の塔(吹抜けの中庭空間)からは、明るい日差しが差し込み気持ちがよい。
開放的な待合エリアで、こども達は保育士さんと折り紙をしたり、お母さんに絵本を読んでもらって思い思いに遊んでいる。そこには、こども達の自主性を尊重しながら工作やゲームを楽しめる空間が広がり、医師・看護師はこども達の様子を観察する。
新生児や発熱のあるこども達は、感染防止のため特別なエリアに案内されていく。

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箇条書きでポイントだけをまとめるよりも、ポイントをストーリー(物語)に織り込んで書き起こすことで、将来の施設で実際に起こりうるさまざまなシーンを、各人がより具体的にイメージすることができます。また、それらを皆で共有することで、いっそう具体的でブレのない施設計画をまとめることができます。

第4章 ブリーフの完成:コンセプトを構築し、要求条件と制約条件を明確にします

ストーリー(物語)を書き起こしメンバー間で読み合わせていくことで「本当に理想的な施設のあり方」を明確にし、ブリーフを完成します。抽出され明確となった「思い」を、設計者にしっかりと伝え共有することが大切です。

中野こども病院様の新病院計画では、コンセプトプランニングを実施して明確になった皆さまの思いや、新たに出てきた課題などを共有・整理し、それらを踏まえて「今後の医療活動の拠点となる新病院はどうあるべきか」という視点で弊社のプロジェクト担当者と対話を重ねてまいりました。

「子どもの体を治療し、心のケアや子育てまで支援する」新病院を計画
患児を看守る・自然治癒力を高める空間づくり
待合スペース(新館)

待合スペース(新館)

待合スペースは、中待合をつくらずワンルームとし、その周りを囲むように診察室等を配置することで、待合スペースのどこにいてもすべての部屋から見渡せるオープンな設えとしました。
待合スペースの一部には、「“遊び”を通して患児の自然治癒力は高まる」という病院の考えに基づき、プレイコーナーを設置しています。

院内を明るく満たす吹抜け空間「光の塔」

本館1階から3階の中央を貫く「光の塔」と名づけた筒状の中庭空間をつくることで、自然光で院内を明るく満たす計画としました。光の塔は、院内に光を導き入れるだけでなく、1階の待合スペースの空間を緩やかに分割しており、病状の異なる患児を混在させないことにも有効です。

「保健」と「治療」を2棟で分ける安全・安心な病棟構成

予防接種や健診に訪れる親子と病児の交差感染を防ぐため、保健と治療に必要なそれぞれの機能・空間を新館と本館に分けて構成する病棟計画としました。

子どもの恐怖心を軽減するサイン計画

画像子どもにとって「病院は怖い」というイメージを軽減するため、子どもに親しみやすいサイン計画を形にしました。例えば、診察室などの扉に描かれた動物は、扉を開けるとその正体がわかるような絵本の世界の遊び心を交えた設えになっており、少しでも子どもの恐怖心を和らげられるよう工夫しています。

社会医療法人 真美会 中野こども病院
理事長・院長 木野 稔 様

画像大成建設は、臨床心理学を用いたオリジナルインタビュー手法を用いて私たちが理想とする新病院のイメージを引き出し、体系的にまとめ、明確なコンセプトをつくる一助を担っていただきました。
専門家によるインタビュー手法を用いて、プロジェクトの初期段階から病院のスタッフに参加してもらうことで、「どんな病院をつくりたいのか」という皆の思いを、「どのような医療活動を行うために、どういう病院をつくる必要があるのか」という思いにまで掘り下げることができ、大変貴重な機会となりました。

パンフレットのご案内

画像本記事でご紹介した内容について、パンフレットをご用意しております。お気軽にお問合せください。

ご請求は、下記「お問い合わせ/資料請求フォーム」よりお寄せください。
※請求されるパンフレットの名称を必ずご記入ください。

  • パンフレット名「コンセプトプランニング」

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小児医療の新たな活動拠点を、診療を続けながら構築したい。

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社会医療法人 真美会 中野こども病院
理事長兼院長 木野 稔 様

小児内科専門病院として、スタッフが一体となり、「子どものためなら何でもする」医療を提供してまいります。