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地震関連特集 天井地震対策の実際─天井の地震対策実施における課題とポイント

「天井の地震対策の必要性は感じてはいるが、地震対策の方法や具体的な進め方がわからない」といった相談が多く寄せられています。
そこで今回は、天井の地震対策の実施に必要となる検討課題やポイントを解説します。

天井地震対策の進め方

天井の地震対策の基本フロー

天井の地震対策の基本フロー

天井の地震対策でまず始めに行う作業は、目標とするレベルの確認です。
どんな天井にも適用でき、どんな揺れに対しても完全に崩落や破損を防止することができるようなオールマイティーな地震対策技術はありません。かけられる費用についても、限度があるでしょう。
従って天井などの非構造部材の地震対策を検討するにあたっては、「その建物自体が持っている耐震性能」をベースに、

  • 守るべき対象=人・モノ・機能などは何なのか?
  • 人命保護、必要機能の維持など、どのレベルまでの対策が必要なのか?
  • その際の地震の規模をどう考えるのか?

といった、さまざまな視点からの条件を整理して、対策を講じることが必要となります。それには、調査、診断の段階からすべての関係者が一体となって検討を進めていくことが何よりも重要です。

(1)範囲・対象を決める

設計図書や簡単な目視などから、改正建築基準法施行令の適用範囲、部屋の用途(内部の物品、機器の状況)、天井の状況(過去の地震被害例など)よりリスクを洗い出し、地震対策を行う天井の範囲を決めます。

(2)調査(リスク診断)

天井の地震対策の対象範囲における調査を実施します。この時、耐震性の検証レベルに応じた調査内容で実施することが望ましいですが、まずは簡易的な調査により、天井システムの概略を把握した上で対策の実施時に詳細調査を行い、設計に反映させることもできます。
調査は現状を把握し、診断し、対策を提案するために必要ですが、言い換えれば図面や記録が残っていないから必要となる作業ともいえます。今後は天井の性能維持のためにも、改修やリニューアル工事に備えて何らかの形で記録を残すことが重要と言えるでしょう。

(3)対策の方針を決める

耐震性の検証方法及び地震対策方法については、仕様によるものから地震応答解析によるものまで多岐にわたっています。
また基本的な天井の地震対策については以下のような内容があり、実際に対策を講ずる際にはそれらを組み合わせて行うことになります。

  1. 地震力に対して、ブレースなど水平力を伝達できるものによる補強
  2. 天井を軽量化することで地震力を軽減させるとともに、落下した場合のリスクを軽減させようとする方法
  3. 万一天井がはずれても落下しないような構造にする方法
  4. 天井自体を無くしてしまう方法
対策手法の4分類

対策手法の4分類(拡大)

これらの天井の耐震化とともに、天井内設備の固定や振れ止め、落下防止を計画します。
天井を無くす方策は、意匠性や換気回数、吸音効果、排煙や設備機器の固定などに関係することから採用できないケースもあり、注意が必要です。

(4)具体的な対策方法の合意

調査・診断結果で耐震性に疑問がある場合は、補強、張り替え、またはリスクの許容などから方針を決定します。
補強や張り替えの場合は、対象となる部屋の使用状況や天井の補強工事の際の要求事項、天井内の施工状況を考慮して、上記の対策からコスト、工期、残存リスクを踏まえて選択します。
方針が決まり、実際に補強設計を行っていくと設備機器や配管、ダクトとの干渉のため、思うような補強ができないことが多々あります。そのような場合は、設備機器を盛り替えて補強を優先させるのか、補強箇所数やバランスを犠牲にしてできる範囲での補強にするのかを選択する必要があります。その上で工期やコストと残存リスクから総合的に判断し、依頼側と施工者の双方で対策方法を合意、決定します。

(5)施工の実施

双方の合意のもと、補強対象となる天井に対して採用された対策による補強工事を実施します。施工期間、施工可能な時間帯、音や振動や粉塵などに関する条件などを考慮し、施工中の安全を確保したうえで施工計画を立てます。その際に部屋の使用について、制限が生じる場合もあります。

天井地震対策Before/Afterにおけるポイント

調査・計画段階でのポイント

天井の地震対策において、現状把握を行う際は天井点検口からの確認が主になります。必要に応じて点検口を追加したり、天板を外すなどして確認する必要もあります。
確認するポイントは、一般的な仕様の確認の他、劣化や緩み、外れが無いか、さらに天井の動きの異なる部分で補強がされているかといった点です。例えば、

  • 段差のある部分
  • 外周部や設備機器との取り合い部などで、動きが拘束される部分
  • 大型天井などで、吊方式が異なる場所など
  • 設備機器などの固定や振れ止めの状況

などがあります。
その他、システム天井の場合は、メーカーの仕様や保障性能についても確認しておく必要があるでしょう。
補強計画では十分な量のブレースをバランスよく配置し、周囲にクリアランスを設ける耐震天井を念頭に置き、ニーズや部屋の機能、施工条件や工事費などを総合的に判断した上で計画することが求められます。

しかし実際に計画すると、天井内の設備機器との干渉や施設を使用しながらの施工条件、天井内の施工性などから理想的な補強が計画できるケースは少ないようです。
一般的なブレースの補強と合わせて、クリアランスの代わりに外周部分に金物補強による落下低減を行う地震対策天井や可能な範囲でブレースを追加し、落下低減をメインにした落下低減天井で対応するなど、目的に即した対応策が求められます。

また、金物補強に合わせて落下防止をメインにしたフェイルセーフなど、天井の破壊や落下のリスクを考慮し、業務継続上許容できる範囲を判断した上で対策を計画していく必要があります。

そのようにして計画した補強方法にしても、実際の施工段階では修正の必要が生じることも多々あり、実施設計の中で収束させていく必要があります。

※フェイルセーフとは、何らかの原因により、装置・システムにおける故障や誤作動などの障害が発生することを想定しておき、被害を最小限にとどめる工夫を予めしておくこと。

施工計画、実施段階でのポイント

天井内に十分な施工スペースが確保できない場合は、補強の際に足場が必要になります。
通常の2.5m程度の天井ならば、のび馬などの簡易足場で済みますが、天井高によってはステージ足場を組む必要があり、天井補強を行う部屋を使用しながらの工事は難しくなります。夜間や休日での工事の可否や工事の振動や騒音に対する配慮などにより、工期、コストに大きく影響が出ます。
アスベストを含む吹付耐火被覆や建材の有無によっても施工計画に大きく影響が出ますので、予めアスベスト調査の有無や改修工事の履歴などを確認しておく必要があります。

伸び馬

伸び馬

ステージ足場

ステージ足場

対策後のポイント

このように設計され、施工された天井の補強については、設計図書等にどのように表記するべきか、また施工記録としてどの様に保管するべきかなど、新たなルールの策定が必要になります。
天井や設備機器の更新、またリニューアル工事の際に設計図や施工記録がない場合は調査を行い、現状の把握が必要になります。また、部分的な変更を行う場合も設計思想がわからなければ、変更案を作るために全体の設計をやり直す必要が生じます。
天井の耐震性の維持のためにも、施設を資産、資源として今後も活用していく上でも、設計図書や改修の記録はきちんと保管しメンテナンスを行うことが大切です。

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MUSビジネスサービス株式会社 MUS豊橋ビル

テナントビルを使いながら天井の地震対策を行い、BCP対策を強化したい。

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お客様の声

MUSビジネスサービス株式会社
ファシリティ業務部 第二課 中島 敬太 様

「天井の解体なし」でできる技術によって、テナント様に迷惑をかけることなく、地震対策を行うことができました。